2008-05-10

カヤックとオスロフィヨルド

Lineの教会で知り合ったTorさんのお誘いを受け、オスロフィヨルドでカヤックを経験した。カヤックは小さなカヌーで、両側に水かきの付いた櫂を用いて右左右左...と順に漕ぎ進む(puddle)。Torさんは私が教会を訪れる度に牧師さんの言葉を英語に通訳して下さる親切な方で、友達はできたのか?今週はどうやって過ごしたのか?と普段から気を配って頂いている。先週はオスロの海の案内を申し出て下さり、是非ともとガイドをお願いしたら早速その日の夕刻にメールが届いた。参考までにと添付してあった写真がコレである。ビックリ!!!自分はまったくカヌー経験が無く、水泳も得意ではないと伝えると、ライフジャケットと比較的安定なカヤックを用意するから心配ないとの返事が来た。それでも緊張しながら一週間をすごし、研究所の先生方に命の保証について尋ねてみたが、夏場のオスロ湾内でのpuddlingなら何も心配無いとの答えだった(研究所で階が一緒のSletsjoe先生はカヤックの国内チャンピオンだ)。Laudal先生からも勧めて頂く。

午前9時にKringsjaに車で迎えに来て頂いて、10時少し前に海岸に到着した。二人で共同しカヤックを車から下ろし、並べたところがコレ。黄色いプラスチック性のカヤックが私用で、隣の茶色く細いのが彼のである。彼のカヤックはなんと自作!もともとカヤックはグリーンランドやアラスカのイヌイット達が用いた狩猟用カヌーで機動性を重視した乗り物である。その分コクピットは人一人がギリギリ乗れる大きさになっており、両足を前に伸ばして座る(私のカヤックの前方の穴はただの荷物入れ)。私のカヤックは彼のに較べ安定かつ頑丈らしい。スカート(?)とライフジャケットを来てカヤックの前で記念撮影。カヤックにいよいよ乗る段になって、スカートの意味を理解する。コックピット部分に水がかからないよう広げて覆う役目になっていた。乗るのにも一苦労で彼から助けてもらいながら体重を船に移動する。櫂を見よう見まねで使いながら波止場から海に出た。天候にも恵まれ、海は穏やか。カヤックも思ったより安定している。海上に出てまず周囲の景色の素晴らしさに言葉を失った。まさに野鳥の宝庫で、所々に存在する切り立った岩礁の上ではカモメやその他水鳥が羽を休めたり巣で卵を温めたりしている。野鳥の楽園だ。沖に少し出てから、基本的な操縦方法を教わった。最初は両腕の力を使って漕いでいたがコレが間違い。両腕を前に突き出した状態で櫂を水面に平行に持つ。この形で腕を固定し、腰の回転の力を利用し漕ぐ方が疲労も少なくて済む。私のカヤックには足元に進路を調節する機能(舵)が付いていた。Torさんは私の約50〜100メートル前方を進み、間隔が開きすぎると止まって待っていてくれる。待たせるのも悪いので、必死に後を追いつこうとするが彼のカヌーは早くあっという間に間隔が開いてしまう。彼の漕ぎ方は力を抜いているように見えるので、たぶん私はどこか余分な所に力が入っているのだろう。出発から1時間ほど経過し彼が聞いた。前方500メートル程の島を示しながら「あの島まで行けるか?あそこまでいったら昼ご飯にしよう」。昼飯と聞いて元気が出て、力を振り絞り漕いでいると15分くらいで目的の島に到着した。周囲約2km程の小さな島。再び彼の助けを借りながら上陸し、ほっと一息つく。私のカヤックには小さな収納庫が付いており、彼の用意したサンドイッチとコーヒー、そしてフルーツが入っていた。食事の前に島の周囲をグルッと二人で回ってみた。季節も夏に入り様々な花が咲いていた。その内の数種は良い香りを放っていた。島には一軒の別荘と思しき住宅がある以外は、自然がそのまま残っており、すぐ横にも同じような島がいくつも並んでいる。食事をしながら会話を楽しんだ。食後彼から質問。「来た道をまっすぐ戻るか、それとも回り道をして帰るか?」昼食ですっかりリフレッシュし元気の出た私は、回り道を選択した。実はこの決断を後でかなり後悔する事になる。再びカヤックに乗り、船出。お昼を回った頃から海上にヨットや、クルーザーなどの小型ボートが目立ち始める。セーリングボートはまだいいが、モーターボートの通った後には波が出来て、私のカヤックが上下に激しく揺さぶられる。また彼らの船に衝突しないように進路にも気を配る必要がある。ぶつかったらとても勝ち目はない。沖に出た為波も高くなり、その影響で思った程前に進まなくなってきた。陸地が近いうちは船の進度を実感できたが遠いとそれも難しい。相方はというとそれらの影響を全く受けず、飄々と前を進んでいく。船の間隔がだいぶ開いてきたので、彼が協力して漕がないかと提案してきた。???。最初意味がわからなかったが、協力とは何のことはない、彼のカヤックと私のカヤックをロープでつなぎ、彼に引っ張ってもらうことだった(笑)。文字通りお荷物となってしまった私は、彼に申し訳ない思いだったが、ロープでつながっているだけでも安心感が得られた。岸に近くなってからロープを外し、陸沿いに進んだ。陸といっても砂浜ではない。氷で削り取られた崖、すなわちフィヨルド伝いに進むため、波打ち際で波が荒くなっており注意を要した。船酔いまで経験する始末。午後に出発してから2時間程経過したので、あとどのくらい漕ぐのか尋ねると「あと2時間ほどだ」と真面目な顔をして言う。思わず顔をひきつらせると彼は笑って15分くらいだと教えてくれた。その言葉に救われて、我慢しながら漕ぎつづけ、15時ごろにようやくスタート地点に戻って来た。午前中の分も合わせるとトータルで5時間、距離にして約10キロほど。初めてにしてはかなりの長旅だ。長時間の運動で腕が疲弊し、カヤックを車の上にのせるのにも一苦労。彼のこの後の予定を聞くと、市の陸上競技会に出るという。鉄人のような男だ。自分が軟弱なだけかもしれないけども。でも家に帰ってLineの話を聞いて納得した。彼はカヤックでスウェーデンまで旅した事があるらしい。ちなみに彼一人ならばゆっくり漕いだとしても5時間で30キロは進むようだ。唖然。

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