2008-05-22

アーベル講演

今日は10時からアーベル講演。オスロ大学のBlindernキャンパスにある図書館の大ホールが会場である。昨日の授賞式もそうだったが、なんとなくワクワクした雰囲気である。10時前に会場に到着すると、良く知った顔ぶれもチラホラ見えて会場が正しい事がわかり、ホッとした。入り口近くではプログラムや、記念書籍、Tシャツを配布していたので、私も記念に「アーベル本」(後述)とTシャツを頂いた。

10時にEllingsrud教授(現オスロ大学長)の挨拶で始まり、まずはThompson教授の講演。コーヒーブレークを挟んでTits教授が講演した。Thompson教授はお元気だが、Tits教授は年齢と病気の影響が垣間見え、何度か同じ話が繰り返されたり、話が中断したりする場面もあった。しかし講演終了時は両教授に惜しみなく暖かい拍手が送られ、とても良い雰囲気であった。午後からは両教授の仕事に関係のある講演が二つあったが、話の上手い方々で、私のような門外漢にも研究の雰囲気が伝わるように丁寧に準備されていた。

記念講演の後、夕方からはノルウェー科学文学アカデミーにおいて晩餐会(ディナー)が開かれた。招待客のみが参加できるようだったが、R先生のおかげで私も特別に参加させていただく。ノルウェー科学文学アカデミーはNational Theatretまで地下鉄で出て、そのあとトラム(路面電車)に乗ってSkarpsnoで降りる。会場に行く途中パーティーの参加者に何人か会ったが、みなスーツやドレスなどの正装だった。私ももしスーツを持っていれば着たのだけど持ち合わせていないから仕方がない。外国人なので服装は大目に見てもらおう。会場は、中世の貴族の屋敷みたいに豪華な建物だった。食事は立食形式だったので、いろんな人と会話を楽しみながら食事をできれば良かったのだけど、ノルウェー語が話せないために少し寂しい思いをした。その代わりR先生の学生であるドイツ人の女子学生とずっと会話していたように思う。夜10時を過ぎてもまだ辺りは明るく、なかなかディナーが終わる気配が無かったので、電車の時間もあるし、適当な時間で失礼した。

帰ってから今日の記念品を整理。その中のアーベルの生涯をつづった本。中には彼の自筆原稿のコピー(写真)が三篇納められている。クレレジャーナルに掲載された論文でフランス語で書かれていた。ざっと眺めたが何やら楕円関数に関する数式と思われるものが多く記述してある。アーベルの手書き論文はノルウェーに戻らず、多くは失われてしまった。クレレもアーベルの論文を売ってしまった。スウェーデンのMittag-Leffler研究所に残っていた原稿をノルウェーが近年譲り受け、本が創刊されたとの説明がある。アーベルの論文があまり残っていないのは、彼が生前正当な評価をされなかったからか?彼は生涯常勤の職を得ることができなかった。期待を込めて投稿したパリの論文に対し何の連絡も無く、紛失してしまったと信じ込み、その後結核にかかり若くしてこの世を去ってしまった。不遇にも程がある。心血を注ぎ書いた論文が紛失してしまったと確信したその衝撃は如何ほどのものであったか?想像するだけで胸が痛ましい。

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